手造りの聖地巡礼

モルドヴァの修道院を訪ねて

東ヨーロッパにあって唯一のラテン系国家ルーマニアへの旅。2008年12月、私ははじめて下見の旅で、一人でこの国を訪れました。まずはその交錯する歴史と宗教の多様さに目を瞠りました。ルーマニアの語源は、「ローマ人の地」の意であり、その歴史は深く古代ローマ帝国と関わっています。

ローマ帝国の対夷敵の北の防衛戦はライン川とドナウ川でした。現在のドイツ、オーストリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアを貫く長大な国境線にローマ最強の10個軍団が展開していました。その軍団の退役兵たちが、ローマ市民権を得るとともに土地をもらって入植したのがドナウの北なるダキアで、現在にいたるルーマニアのはじまりです。

ローマ帝国以後もこの地には、タタール(モンゴルの1氏族)、トルコ、ハプスブルグ家、ロシアなどが浸入し、宗教的にもローマン・カトリック、ギリシャ・カトリック、ルーマニア正教、プロテスタント、ユダヤ教が現存し、それぞれが世界遺産の「祈りの家」である教会を持っています。現在の使用通貨はユーロであり、EUとは現代に復活したローマ帝国だと感じたことです。

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